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September 1, 2025

YouTube動画広告で「機能訴求」をやめたら、CPAが約1/4になった——ある健康商材の試行錯誤

ある健康商材のYouTube動画広告は、顕在層への機能訴求で初動こそ好調でしたが、数か月でCPAがじわじわ悪化しました。なぜこの型が構造的に行き詰まるのか、2つの失敗、そしてターゲットを絞らず「意外な素材」で広く惹きつけCPAを約1/4にした転換までを、試行錯誤の記録として整理します。

ある健康商材のYouTube動画広告は、好調に始まった。チームは「健康数値の改善」という機能訴求で動画を作り、数値が気になる顕在層にターゲティングした。広告費は約1.5倍に伸び、YouTubeはアカウント全体の約4割を占めた。このまま回し続ければいい——そう見えた。

ところが数か月で、CPAがじわじわ悪化する。訴求もターゲティングも変えていないのに、数字だけが静かに落ちていく。運用者なら一度は味わう、あの嫌な感覚だ。本稿は、このキャンペーンがどこで間違え、2つの失敗を経て、最終的にCPAを約1/4まで改善した過程の記録だ。うまくいった話というより、「どこで外し、何を変えたら当たったのか」の地図に近い。

なぜ「機能訴求×顕在層狙い」は行き詰まるのか

振り返れば、起こるべくして起きた現象だった。YouTubeはテレビCMに近い受動媒体で、検索広告と違って「今すぐ欲しい人」だけに届けることが構造的に難しい。それでも顕在層に寄せた配信を続けた結果、同じユーザーへの表示回数(フリークエンシー)が増えすぎて見飽きられ、CTRが下がり、CPAが悪化するループに入っていた。目安になる言葉がある——YouTube動画広告のヒット率は良くて3割、10本作って3本当たるかどうか。1本目はたまたま当たっただけで、次のヒットには試行錯誤が要る。そこからが本当のスタートだった。

成果の8割は、制作前のリサーチで決まる

初ヒットがどう生まれたかに時系列を戻す。手探りのなかで決めたのは、体系化されたリサーチフレームワークを自己流にアレンジせず、そのまま転用することだった。フレームワークはWHO・WHAT・HOWで構成され、要は「誰の、どんな感情を、どんな言葉と構成で動かすか」を全部書き出す作業だ。1人の実在顧客を深掘りするN1分析が肝なので、アンケートやインタビューを丁寧に行い、ボード上にまとめた。

見えてきたのは、表の悩みと裏の欲求のギャップだった。表は「健康数値を改善したい」。裏には「辛い努力はしたくない」「薬やサプリに頼るのは怖い」「できれば自然な食品で何とかしたい」が隠れていた。競合のサプリや機能性表示食品は価格勝負に走っていて、その市場で「薬やサプリ(異物)ではなく、野菜(食品)の力で数値を改善する」というポジションは意外なほど空いていた。この分析から最初の動画を作り、初ヒットに至る。だが本番はここからで、前述のCPA悪化が始まり、次のクリエイティブを模索するフェーズに入った。

「媒体の空気に寄せる」2つの失敗

成果を戻そうと次に出したのは、「YouTubeという媒体に馴染ませる」方向だった。ターゲットが普段見ていそうな動画の文脈に寄せれば自然に見てもらえるはず、という読みだ。

1つ目は、YouTubeでよく見る夫婦チャンネル風。「質問コーナーやっていきます!」と始めたが、40〜50代のターゲットには夫婦YouTuberという形式自体が馴染みが薄く、共感ではなく演技っぽさ・わざとらしさが先に立ち、結果は振るわなかった。2つ目は「速報です!」で始まるニュース番組風。冒頭の注目は取れたものの、広告だと分かった瞬間に「騙された」という感情が生まれた。さらに「健康診断の数値が気になる方へ」と冒頭で絞りすぎたことも重なり、スキップ率は高止まりした。

2つの失敗には共通構造があり、同じ3パターンはTikTokやInstagramのリール広告でも起こりうる。1つ目は演者のリアリティ不足——馴染みのない形式を無理に使うと「あるある」でなく「わざとらしさ」になる。2つ目は期待値と中身のギャップが不快方向に倒れる——「重大ニュースかと思ったら広告」は怒りにつながる。3つ目は尺と情報量のバランス崩壊——6〜7分に良さを詰め込みすぎ、肝心のオファー前に離脱される。実際、冒頭10秒で約半数が離脱していた。

転機——「機能」ではなく「素材」で惹く

他商材の成功事例やトレンド動画を分析すると、成果が出ている動画ほど冒頭のターゲットの幅が広いと分かった。特定の誰かに呼びかけるより、誰でも「え、どういうこと?」と引っかかる入口が強い。転機は、クライアントが共有してくれた過去の高成果バナーだった。打ち出されていたのは機能でも数値改善でもなく、商品に使われている意外な原材料。それをジュースにする発想自体が珍しく、競合にも世界的にもほぼ無い。これこそ最大の差別化要因ではないか、と考えた。

「え、これ飲むの?」「どんな味?…まずそう」。正直みんなそう思う。だが、これがフックになる。「野菜ジュース」と聞くと脳が「健康にいいやつね」と処理してスルーするが、意外な原材料名は処理しきれずに引っかかる。これが入口になる。

ここでニュース風との決定的な違いが見える。どちらも冒頭に違和感をつくる設計だが、期待値の裏切り方が逆だった。新しい企画では「この違和感は不快方向か、好奇心を刺激する方向か」を事前にチェックする癖をつけるだけで、失敗の確率はかなり下げられる。ターゲットの考え方も改めた。受動媒体のYouTubeは、動画を見に来た人の横に差し込まれるもので、検索広告のように「探している人」に出るわけではない。だからこそ意外な素材名で、健康に関心のない層の指まで止められる。入口は広く取り、中盤以降に「実はこういう悩みに効く」と徐々に絞り込む。WHOは狭めるのではなくできるだけ広げる、という考え方を実践した形だ。

細部が成果を分ける——「How」を詰める

切り口が決まっても終わりではない。「どう見せるか」をクライアントと二人三脚で詰めた。ナレーションは、きれいに語るアナウンサー型から「友達に発見を教える」トーンへ。「ねえ聞いて、これ知ってる?」と横から話しかける距離感だ。広告臭を消すには、商品を説明するのではなく面白い発見を共有する態度が要る。この切り替えが高い視聴維持につながった。

ノンバーバルな要素にも手を入れた。衣装はその素材をモチーフにした柄のTシャツに変更——クライアント担当者が「ぴったりの衣装を見つけた」と持参してくれたもので、こうした遊び心が違和感の視覚的な強調になった。冒頭では本物の素材をモデルに持たせ、「え、なにこれ?」の引きを強めた。尺もそれまでの7分超から大幅に短縮し、難しい説明を省いて誰でも分かる内容に整理した。

結果

配信すると、これまでとはまったく違う数字が出た。ヒット訴求のCPAは失敗パターンの約1/4〜1/6、CV数では最大で約90倍もの差がついた。特に驚いたのは視聴維持率で、最後まで(100%)見た割合が15%に達した。「広告なのに、気づいたら最後まで見ていた」という状態をYouTube広告で作れたのだ。

あなたの商材の「違和感の種」を見つける

得られた学びは5つだ。成果はほぼ制作前のリサーチで決まり、N1分析なしにヒットは生まれない。型は守るためでなく疑うためにある——最初は型で守り、慣れたら壊し、王道が効かなくなったら視点を「機能」から「素材」や「体験」へずらす。冒頭でターゲットを絞りすぎない——「あなたへ」の前に「なにこれ?」を、相手を主語にする前に対象物で惹く。ノンバーバル(衣装・小道具・話し方)は想像以上に効く——何を言うかより、誰がどう言い、どう聞こえるか。そして外した仮説もちゃんと次の武器になる——失敗があったからこそ、ターゲットへの向き合い方も台本もテロップの勘所も分かった。

「うちの商材に違和感なんてない」と思う人ほど、立ち止まってほしい。原材料や素材に「え、そうなの?」はないか。製造プロセスや産地に意外なストーリーは眠っていないか。開発者が想定しなかった使い方はないか。競合が絶対に言わない(言えない)ことは何か。差別化ポイントは機能の中ではなく、機能の裏側に隠れていることが多い。意外な切り口はひらめきで突然生まれるものではなく、社内外のナレッジを読み込み、組み合わせ、外し、考え、また試す——その地味な繰り返しから生まれる。あなたの商材にも、きっと「違和感の種」がある。

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