SNSで動画を見るのが当たり前になり、動画広告に取り組む人も増えた。だが、いざ作ろうとすると「何から始めればいいか分からない」という人も多い。本稿では、SNS投稿に馴染むユーザー目線の縦型動画でも、ブランディング目的のハイクオリティな動画でも使える制作の流れを解説する。自分で作る場合と外注する場合の両方を想定しているので、合うほうを使ってほしい。
作る前に、情報を整理する
まずは情報を4つに分けて整理する。目的、ターゲットと訴求軸、配信媒体と広告の種類、スケジュールと見積もりだ。
第一に目的を明確にする。トレンドだからという理由だけで配信すると、工数や費用をかけたのに十分なインパクトが出なかった、となりかねない。動画の特徴を理解し、配信目的を固める。動画はテキストや静止画より多くの情報を伝えやすく、インパクトが出て印象に残りやすく、多彩なターゲティングができ、視聴回数・視聴率・視聴単価など詳細な効果測定ができる。
第二にターゲットと訴求軸を固める。自社・顧客・競合の3C分析をすると、押すべき強みと届けるべき相手が見えてくる。自社(Company)の強みは何か、顧客・市場(Customer)が解決したいことは何か、競合(Competitor)のポジションと戦略はどうか。定量データや口コミを参考にターゲットを明確にする。分析せず価格訴求ばかりしていたら、実は競合より高くて反応がなかった、ということも起こる。訴求軸は、ターゲットに有益な情報や、他社と比べた独自性・優位性を打ち出せるとよい。
第三に配信媒体と広告の種類を決める。動画広告と一口に言っても、配信面はInstagram・YouTube・TikTokなどさまざまで、フォーマットも多岐にわたる。媒体のユーザー数と優先度、商材に合うユーザーにリーチできるか、どの配信面に出るか、商材に合う表示フォーマットか、競合がやっているか、を踏まえて選ぶ。フォーマットで作り方が変わるので、入稿規定・審査ガイドライン・好まれる表現を事前に確認する。
第四にスケジュールと見積もりを出す。要件が固まったら、まず各作業の担当者を整理する。複数人のプロジェクトをスムーズに進めるには「誰が何を担当し、誰が責任者か」を明確にすることが重要だ。おおまかな例として、構成=ディレクター(社内)約5営業日、絵コンテ=Webデザイナー(外注)約5営業日、撮影・レタッチ=カメラマン(外注)約10営業日、編集=Webデザイナー(外注)約10営業日、といった具合になる。秒数や求めるクオリティで工数や外注要否は大きく変わる。社内に知見がある、ユーザー投稿に馴染む縦型を作るなら自社で完結できるし、リソースが足りない・高クオリティを求めるなら外注を検討する。判断がつかなければ制作会社に相談するのもよい。制作費とスケジュールを固め、合意を得てから進める。
構成を考える
構成を1から考えるのは難しいので、フレームワークに頼る。定番が3つあり、商品をしっかり説明する長尺ならABCDかCAMS(ブランド認知はABCD、購買につなげたいならCAMS)、短尺やスキップ可能な配信面なら冒頭のインパクトが重要なのでAIBACが向く。どんな動画でも、開始数秒で惹きつける、起承転結で飽きさせない、最後に購入や検索など具体的な行動喚起をする、の3点は押さえたい。
絵コンテに入る前に、集めた情報と構成案を1つのファイルにまとめ、関係者に共有して方向性を確認しておくと、後の絵コンテ修正が減り、外注先も概要をすぐ把握できる。そのうえで絵コンテ——動画全体の流れをまとめた設計図——を、次の項目に沿って作る。
- シーンの順番(No.)
- 映像/キャプションの説明
- テキスト
- 音声
- イメージ
- 演出
- 秒数
媒体によっては秒数に規定がある。セリフ・ナレーションを自分で読み上げ、話し切るのにどれくらいかかるか確認してから原稿を見直す。
撮影・編集する
関係者ですり合わせた絵コンテが完成したら、撮影・編集に移る。まず素材を用意する。素材サイトを使うと撮影の時間や費用を抑えられるので、イメージに合う映像・写真がないかまず探す。なければ、あるいは商品や社員を登場させるなら撮影が必要だ。SNS広告ではユーザー投稿に馴染む動画のほうが自然に見てもらいやすいので、スマホ撮影も良い選択になる。
素材がそろったら、不要なシーンをカットし、テキストやBGMを入れて編集する。日常感のある動画はスマホアプリで簡単に編集でき、PCならCanvaやLetro Studioが扱いやすい。自分で作るとき意外と忘れがちなのがBGM・効果音・ナレーションだ。TikTokやYouTubeは音ありで見るユーザーが多いので、映像に合わせた音を足すと興味を引きやすい。編集を外注する場合は、次の情報を共有するとスムーズだ。
- ターゲットや構成をまとめたファイル
- 絵コンテ
- ファイルサイズ・アスペクト比・再生時間
- 素材(自社で用意する場合)
- 希望納期
最終確認
自分で作った、または外注して完成した動画を最終確認する。チェックポイントは次の通りだ。
- ユーザー目線で分かりやすい内容になっているか
- 実際の配信面で見たとき、文字の大きさなど視認性が保てているか
- ナレーションがしっかり聞こえるか
- テンポや間の取り方に違和感がないか
- 誤字・脱字・不適切な表現はないか
これらをクリアしていないと、時間や費用をかけたのに成果が出ない事態になりかねない。同じ動画を何度も見ると目が慣れてミスや違和感に気づかないので、必ず複数人でチェックする。
配信は終わりではなく、始まり
動画は静止画より複雑な表現ができるぶん、さまざまな知識を要する。一人で抱え込まず、デザイナーやカメラマンなどプロの助けを借りて、より良い動画広告を作りたい。そして「制作して配信したら完了」ではなく、配信結果を次の施策につなげることがクリエイティブの質を高める秘訣だ。広告クリエイティブのPDCAを回し、質と表現力をどんどん高めていきたい。






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