縦型動画は今やほとんどのSNSで見られ、視聴者数は伸び続けている。TikTok単体でもMAUは2021年8月時点で約1,700万人、その後さらに増えている。全世界で15億人を超えたYouTubeショートに、LINE VOOMやInstagramのリールを合わせれば、縦型動画全体の視聴者数が増える方向にあるのは明らかだ。
それでも「縦型動画を見て商品を買う人は少ないのでは」「クリエイティブをどう用意すればいいか分からない」という理由で踏み切れない声は少なくない。だが、どちらの不安ももう古い。本稿では縦型動画広告の強みを6つに整理し、そのうえで手間をかけない最初の1本の作り方と、向かないケースまで解説する。
視聴をきっかけに、実際に買われている
最初の不安はデータが覆す。動画・インフルエンサーマーケティングを手がけるTORIHADA社の調査では、TikTokユーザーの約3人に1人が、TikTokをきっかけに商品・サービスを購入または申し込んだ経験があるという。カテゴリも幅広く、最多はアプリ/ゲームで34%、次いで食料品が約34%、以下プチプラのスキンケア・メイク、日用品、アパレルと続く。縦型動画は狭いジャンルではなく、幅広い商材を動かしている。
ショッピング機能が充実してきている
視聴から購入までの距離も縮み続けている。YouTubeでは、クリエイターが動画内で紹介する商品をショッピング機能と連携でき、視聴中にそのまま購入できる。アジア圏で実装済みのTikTok Shoppingも同じ方向を指す。こうした機能が成熟するほど、縦型動画の視聴をきっかけにモノやサービスが買われやすくなる。
若年層だけでなく、幅広い層に届く
「10〜20代しか見ていないから関係ない」というのは読み違いだ。10〜20代の視聴者が多いのは確かだが、TikTokの年齢分布は30〜50代以上まで広がり、博報堂の調査では平均年齢は約34歳とされる。LINEの縦型・短尺動画サービス「LINE VOOM」も、男女を問わず幅広い年齢に使われている。年齢・性別を問わず広がり、しかも伸びている——配信面として十分に魅力的だ。
質感や利用シーンなど、リアリティを伝えやすい
一部の面を除き、縦型動画広告は配信面いっぱいに表示されるため、短尺でも比較的多くの情報を盛り込める。静止画では伝わりきらない質感や利用シーンを描けるので、新しい概念で「詳しく見せないと良さが伝わりにくい」商材とも相性がいい。化粧品なら使用シーンで使用感やテクスチャが伝わり、食品なら調理や食べるシーンでシズル感(食欲を刺激する描写)を演出できる。
制作に手間や時間をかけなくてもいい
動画は企画・撮影・編集の手間を考えると後回しになりがちだ。だが縦型動画は2つの理由で作りやすい。尺が短いぶん撮影・編集が軽く、誰でも気軽に投稿する面なのでシンプルなUGC風の動画でも受け入れられやすい。型ができれば、1本30分以内で編集できることもある。
企画では、まず必ず伝えたい情報(利用シーン・独自性・値段)を固め、ターゲットが最後まで見たくなる構成を考え、スキップ判断が下る冒頭の数秒に特に力を入れる。尺は大体決めて編集後に整え、一般には20〜40秒が多い。撮影はスマホで十分で、むしろスマホ素材のほうが親近感が出て成果がいいケースも多い。明るい場所で撮り、他社のロゴを映さないよう注意する。編集は、Canvaのようにテンプレートとドラッグ&ドロップで直感的に作れるツールが扱いやすく、各媒体も無料の編集ツールを提供している。外注するなら、品質重視は制作会社、費用重視はクラウドソーシングという選び分けで、短尺ゆえ納期も1週間以内が多い。テキストは各面のセーフゾーン内に置き、媒体のUIに重要な箇所を隠されないようにする。
1本の勝ち筋を他媒体へ展開できる
成果の出たクリエイティブは、ほぼ手を加えずに他媒体へ横展開できることが多い。TikTok・LINE VOOM・YouTubeショート・Instagramリールは視聴体験もフォーマットも近く、どこかで勝てば他でも成果が出やすい。1媒体で高い成果が出ているなら、積極的に他媒体も試したい。
例外はPangleだ。TikTok広告経由でゲームや漫画などのアプリに配信できるモバイル広告ネットワークだが、配信面ごとに正方形に切り抜かれたり、ごく小さい枠に載ったりと、フォーマットを制御できない。全画面の縦型として横展開したい場合には向かないので、Pangleは面の仕様に合わせて作り直すのがよい。
取り組む際の注意点
スケールさせる前に、3点を押さえたい。第一に、媒体が提供する編集ツールで作った動画は横展開できないことが多い——たとえばTikTokクリエイティブツールキットで編集した動画は、そのまま他媒体に出せない。横展開前提なら使用を避ける。第二に、使う画像やBGMの著作権を必ず確認する。画像は自分で撮るか、PIXTAなど広告利用が許可された素材を購入し、BGMは著作権フリーかAudiostockなど許諾済みのものを使い、いずれも利用規約を読む。第三に、商材の向き不向き。TikTokの年齢層は幅広いとはいえ60歳以上の割合は低く、その層がメインの商材で獲得を伸ばすのは難しい。また縦型はオーガニック投稿のようにカジュアルな傾向があり、ブランディング方針によっては合わないこともある。
今のうちに始めることが、一歩先につながる
縦型動画の視聴者数は今後も増え、それにつれて広告配信の重要性も増していく。企画や編集に自信がなくても、素材が少し足りなくても始められる。必ず伝えたい点を固め、スマホで撮り、冒頭の数秒に力を入れる——後回しにしている競合より一歩先に出られるのは、このフォーマットがまだ開けている今のうちに動くからだ。







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