簡単なバナーは自分で作れても、いざ動画広告を作るとなるとハードルが上がり、社内のクリエイターや外部の制作会社に依頼するのが自然な一手になる。うまく依頼するために必要なのが、動画の設計図にあたる絵コンテだ。作り方のポイントを押さえておくと、動画広告の制作がスムーズに運ぶ。
本稿では、絵コンテとは何かから、陥りやすい注意点まで、分かりやすく解説する。先に安心してほしいのは、機能する絵コンテを作るのにイラストを描く必要はないということだ。
絵コンテとは
絵コンテは、動画に必要な要素——台本、イラストや写真、セリフ、ナレーション、BGM、効果音など——をまとめた指示書だ。フォーマットは制作会社によって異なる。キャスティングから撮影・編集まで大規模に作るテレビCMでは、イラストの絵コンテが多い。細かい描写や動きを表現できるからだ。
一方、購入やサイト登録を直接促す運用型広告では、イラストがなくても絵コンテは十分機能する。運用型はスピード感が命で、制作→配信→分析→改善点を次の動画へ、というPDCAを速く回す。テキストやイメージ写真で制作意図をクリエイターに伝えられれば、1枚も絵を描かずに絵コンテの役目は果たせる。
なぜ必要か——三者の認識を合わせる
絵コンテは、ディレクター・クリエイター・クライアントの三者で同じイメージを共有するためにある。ディレクターが作り、他の2者へイメージを伝え、細部まで明確にすることで制作が滞りなく進む。役割は3つに分かれる。ディレクターとクリエイターの意思疎通——分業ゆえに生じる「思い描いた動画と仕上がりの差」を減らす。クライアントとの意思疎通——優れた原稿でもテキストだけでは雰囲気や世界観は伝わらないので、認識を合わせる。そしてポイントとなるシーンの確認——最も訴求したいメッセージを冒頭3秒に、最後のシーンに購入を促すメッセージを、といった要所を全員で確かめられる。
作る前に、3つを確認する
コマを起こす前に、次の3点で動画像が具体的になる。第一に目的。ブランドやサービスの認知向上か、サイトへ誘導して購入・登録を促すダイレクトレスポンスかで、作り方は変わる。第二にターゲット。化粧品なら年齢・性別・家族構成・所得・職業・学歴・居住地まで把握しておくと、「30代女性向けだからテイストはこう、ナレーションはゆったり」と意図を立てやすい。第三に配信媒体。YouTubeはナレーション速度を上げてテンポよく、Instagramのストーリー広告は45秒以内に収め、音声オンで見る人が少ないためBGMやナレーションは付けない。媒体ごとに作り方が変わるので、先に理解しておくと絵コンテ作りに効く。
3つの工程で作る
動画のクオリティは、シナリオライティング・コマ割り・イメージ選定の3工程で決まる。
シナリオライティングから始める。セリフとナレーションが主体だ。先に映像から着手すると、ナレーションと映像が噛み合わず違和感のある動画になる。この段階はテキストベースで考え、細部は後の工程で詰める。
コマ割りでは、完成した原稿をコマに割り、原稿を調整しながら各シーンの詳細を固める。ポイントは2つ。全コマに動きをつける——画面の何かが動く、次のコマに移る、と常に動きがあると見続けてもらえる。動きのないコマが続くと視聴率が下がる。そして長い文章は短く——1秒に発せる文字数は約6文字で、1コマ3秒ならおよそ18文字。これを超えると早口で伝わりにくい。文字数が多いコマは、そのぶん動きを足して飽きさせない。
イメージ選定では、各コマに自分のイメージに近い素材を当てる。イラストを作れる体制があればイラストでよいが、なければ近い画像を探す。フリー素材やクライアント提供の素材、Adobe StockやPIXTAなどの素材サイトで、シーンに近い語句(化粧水を肌に塗るシーンなら「化粧水 女性」など)で検索し、近いものをコマに当てはめる。テロップが入る場合は、画像内に文字を入れるか脇に補足し、伝わりやすく具体的に絵コンテへ記載する。
陥りやすい2つの注意点
第一に、セリフ・ナレーションは実際に声に出して読む。頭の中で読むより声に出すほうが遅いので、ストップウォッチで各コマの想定秒数に収まるかを確認してから絵コンテを固める。第二に、一人で悩まない。画像選定やテロップの文字入れ、フォントは、一人だと「これでいいのか」と迷いがちだ。クリエイターや制作会社など第三者に意見を求めるとよい。
大事なのは「頭の中のイメージを伝える」こと
「絵コンテ」という名前から大それた資料を想像しがちだが、最も大事なのは自分が思い描くイメージを相手にうまく伝えることだ。その手段の一つがイラストだが、誰の近くにも絵を描ける人がいるわけではない。そうした場合でも、自分の思い描く動画を形にするための作り方を紹介した。基本を押さえたうえで、動画制作に臨んでほしい。







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